当科のポリシーmessage from policy

患者さんへの想い

根治できるよう、最大限の治療を行う

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胸の中には肺・心臓・血管・神経など大切な臓器が複雑に絡み合っています。このため、肺癌をはじめ胸部の悪性疾患の手術には大きな困難が伴いますし、腫瘍がそれほど大きくないのに切除が不可能になってしまうケースも多いのです。けれども、手術によって治るチャンスがある限り、我々は外科医として最大限の治療を行います。

そのための十分な技術、スタッフ、設備は整っています。心臓や血管に食い込んでいる腫瘍は、人工心肺を用いて切除できる場合があります。胸の壁や骨に食い込んでいる腫瘍も、胸の壁と一緒に切除(合併切除)しています。切除部分が大きいときには別の部分の筋肉や皮膚、時には大網(腸間膜)を用いて補填する事もあります。病気が広がっているときは他科の医師と共同で多臓器の同時手術をする事もあります。

とにかく、無事に帰宅していただく

ぎりぎりの治療をすれば、当然危険も高くなります。しかし、どんなに良い治療でも無事に終わらなければ意味がありません。患者さんやそのご家族と同様、私自身も家族の無事を祈る経験をしています。ですから、治療の矛先を鈍らせずに、しかも安全性を最大限確保する努力をしております。

手術と術後を安全に乗り切るために、綿密な術前検査(胸部レントゲン写真、CT、FDG-PET、呼吸機能検査、心電図、採血など)を行った上で患者さんとご相談します。最近では、糖尿病、心筋梗塞後、呼吸不全、自己免疫疾患、肝硬変、腎不全で透析中、他の臓器の癌術後など種々の合併症を持つ患者さんが多くなりました。そのような方に手術を受けていただくためには、大学病院は最も適した場所だと思います。どのような病気にも各々の専門家が揃っていますので、体全体を診ることができるからです。

一方、患者さんの努力もまた必要です。禁煙は絶対に守っていただきますし、肺気腫のある方は術前に気管支拡張剤の治療も受けて頂いています。血圧や糖尿のコントロールが不十分な方には術前にしっかり治療していただく必要があります。自分の体は自分で守る、のお気持ちが大切です。

兵庫医大呼吸器外科の開設後5年あまりの成績は、緊急手術を除く全症例約1400例で術死(術後30日以内の死亡)は2例(0.14%)でした。

納得できる医療を

たとえ結果が良くても不満足で帰宅される患者さんもおられますし、逆に結果が良くなくても笑顔の方もおられます。我々が最も悲しい事は、今でも時々「医者に切られた」とおっしゃる患者さんがおられる事です。そうではありません。医学がいくら進歩しても残念ですが皆が治るわけではないし、治療には痛みや苦しみは必ず伴います。患者さんと医師が、良い事も悪い事も十分に話し合った上で(これをインフォームドコンセントと言います)、患者さんが決断し、医師がそのお手伝いをするのです。全ては患者さんと医師との信頼関係です。結果にかかわらず「あの医師に会えて良かった」と思っていただけるように、我々は最大の努力をいたします。

※以上に述べました事柄を実現するために以下のようなことをしています。

取り組み

少数精鋭

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大学はとかく大きな組織になりがちです。そのことの利点もありますが、臨床外科医の集団として考えると、どうしても1人当たりの手術症例が少なくなってしまいます。手術はある程度まではスポーツと同様に経験量と日々のトレーニングが技術に直結します。ですから、手術の数から逆算した人数で毎日切磋琢磨できるような組織を維持して行く方針です。

年間手術症例数(最近3年間の平均は330例/年)を当科のスタッフ数(6名)で割ると、一人あたり年間50-60例となり、十分なトレーニングが行えている事がわかります。「同じ科の医師なのに、人によって説明が違う」ということが、往々にして患者さんが医師に持つ不信の原因になります。科内のスタッフが一人一人の患者さんの診断や治療方針についていつも共通の考えを持てるように、できるだけ頻繁に(最低でも月・水・金)回診を行うようにしています。

他科との協力関係

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大学は全ての科に専門家が揃っているという大変なメリットを持っています。しかし、各科の間の交流や協力がなければ何にもなりません。我々は創設以来毎週呼吸器系各科(呼吸器内科、呼吸器外科、放射線科病理部など)の合同カンファレンスを行っています。さらに、問題点のある患者さんについては、我々がフィルムや資料を持って該当科に相談に行くことも日常的に行っています。

幸いなことに、兵庫医大では関係各科の連携が非常に良く、一つの科では手に余るような病気はチーム医療(集学的医療)で治療しています。

※写真は兵庫医大がんセンター呼吸器系合同カンファレンスの様子です。一人の患者さんについて、呼吸器内科・呼吸器外科・胸部腫瘍科・放射線科病理部など各部門の医師が集まり知恵を出し合って最善の医療を探っています。

患者さんとの情報の共有

どのような治療もそれぞれに長所と短所があります。どんな治療にも危険は必ず伴いますし、全ての治療が成功するわけではありません。また、人によって病気や生命に対する考え方は大きく違います。

我々は決められた治療を画一的に患者さんに割り当てるのではなく、治療の選択枝をできる限り詳しくご説明した上で、患者さん自身にそれを選択していただくようにしています。そのためには、患者さんとの情報の共有がどうしても必要です。ですから、病気のことはありのままにご本人・ご家族にお伝えしています。怖い話は聞きたくないとおっしゃる患者さんもおられますが、勇気を出して現実を直視して頂けるお手伝いもいたします。

大切な健康や生命がかかっているのですから、一つの病院、一人の医師だけでなく、いろいろな人から説明を受けたい方も多いと思います。我々は、ご希望があれば喜んで他施設での相談(セカンドオピニオン)のお手伝いをいたしますし、また、他の医療施設受診中の患者さんからのご相談にも乗ります。

24時間体制

事故や急病などで一刻を争う場合も時にはあります。そのようなときこそ、治療の最初の一歩がすべてを決定しますから、専門医の最も必要とされる場面です。我々は少人数の科ではありますが、創設以来、緊急患者さんには24時間対応しています。